旭日旗は電子世界に揚がる   (ネーミングセンスがないのは自覚してます


【本編第一話】


「ったく。敵第七波接近!航空機多数・・・と言うより数え切れん。さらに大艦隊接近。大型艦2、小型艦24の26隻構成だ。」
 する事が無く、完全に見張りに徹していたネコからの数度目の報告。
ある程度の質を保ちつつ数で攻めるUNKNOWNに対し、全員が疲弊した頃に本隊登場である。
戦術の面でN.GがUNKNOWNに負けている。後手にならざるを得ないとは言え・・・・・・。
「増援はまだですか!?」
 クロが叫んだその時・・・・・・・・・

 音も無く、それこそ何の予兆も無く、潜水艦が浮上するかの如く蒼い流線型の艦がUNKOWNとN.G.の間に出現する。
「識別、N.G.T、【ミルクヒー】!夕紀さんが来てくれたよ。」
 識別信号を確認したエレが増援が来た事に顔を綻ばす。
 付近の戦闘機を自衛用の機銃で追い払っている【ミルヒクー】の外部端子から夕紀の声が響く。
『天空を 覆い隠すは 敵影か 消え去るが良い 煩き者よ』
 瞬時に300前後のUNKOWN爆撃機、戦闘機が跡形も無く消滅する。
『まったく・・・【フォウル・スレイヤー】を此処まで曳航するのは骨だったんだから』
 【ミルヒクー】艦尾から伸びる牽引ビームによって【フォウル・スレイヤー】が曳航されてきた。
「夕紀さん。ありがとね〜」
 【フォウル・スレイヤー】を切り離した【ミルヒクー】が艦首から薄っすらと消えていく。
『じゃあ私はこれで・・・・・・』
『もうちょっと手伝っても良いんじゃないかしら』
『静かなほうが好きだから』
 夕紀と狗神の会話を外部端子が伝えつつ【ミルヒクー】はサイバーネットの海に潜り込んだ。
『行っちゃったや・・・・・・』
 と呟くエレ。
「とにかく、【フォウル・スレイヤー】が来ただけでも良しとしましょうエレ様。」
 【フォウル・スレイヤー】の後ろまで引いてきたクロが答える
「そうだね。・・・・・・なぎささん、前みたいにフォウルスレイヤーを使うこともできるけど、どうします?」
 何時の間にかアーバレストから降りたエレがなぎさに問いかける。
なぎさも攻撃を中止している為、戦線を維持しているのはガンタンクに乗ったヴィーのみ・・・・・・不安だ。
「あれだけの数の敵を相手にするなら此方もある程度の頭数が必要です。私も私でフネを出しますよ。」
 そう答えるなぎさの眼鏡の左目レンズには緑色の文字が流れるように表示されている。
「しかし・・・」
 何か言いかけたエレを強引に遮るなぎさ。
「此処は瑞穂国海軍省LAN内ですよ。此処でなら何とかなります
データリンク、海軍省所属艦艇データベースバックアップファイル・・・・・。接続オールグリーン!
ホログラムオプション武装モード、【戦艦 八島】!!」
 古臭い基本設計としか言いようの無い水上航行型の戦艦が【フォウル・スレイヤー】の横に出現する。バトルフラッグは旭日旗。
「結構無茶だよな。まあ【八島】ならなぎさだけで動かせるか・・・」
 ネコの呟きは誰の耳にも入らなかったようだ。



「ファイアーウォールが破られる。来るぞ!11時方向だ。」
 普段通りなぎさの補助として八島のレーダーに当たっていたネコが叫び、同時に防波堤が決壊する。
更に大量のUNKNOWN航空機が雪崩れ込んで来た。
『数が多すぎです。【デスザウラー】キッドで一気に片付けます』
 エレからの通信があったかと思うと【フォウル・スレイヤー】の形状が変わり、艦首に機械で出来た龍の頭部を模した様な
模した様な巨砲が出現する。
『デスザウラー荷電粒子砲、発射っー!!』
 通信機を通してエレの声が響く。4桁の単位で消去したにも拘らず未だ残るUNKNOWN。
「敵も味方も現実離れしてますね。」
「主砲、対空砲弾装填完了だ。何時でも行けるぞ。」
 愚痴るなぎさを無視し報告だけするネコ。前後甲板の四つの主砲塔がそれぞれ別の方角に向き、砲身が空を睨む。
「全対空兵装制御開始!SAM、CIWS、GAN・・・・・・FIRE!!」
 【八島】の主砲が、SAMが、CIWS20oファランクスが同時に放たれる。迎撃数は3桁中盤。
攻撃の派手さは【フォウル・スレイヤー】に勝らずとも劣らずなのに攻撃力は格段に劣るのは致し方なかろう。

 多少、空が晴れた所でやっとUNKNOWN側の艦隊が見えてくる。
『【フォウル・スレイヤー】!!?』
『んな馬鹿な!!』
 エレとヴィーの叫びは当然だろう。航空機の陰から出てきたのは24隻の駆逐艦に囲まれた青と黒の【フォウル・スレイヤー】
そっくりの二隻の戦艦。
「どうでも良いですけど。敵さん、見事な輪形陣ですね。」
 本当にどうでも良い感想がなぎさの口からこぼれる。
『先手必勝。エレ様、攻撃します!!』
 クロの声が響いたかと思うと【フォウル・スレイヤー】艦首から異常なまでの光が迸る。
・・・・・・それに反応して【黒いフォウルもどき(アイギス・スレイヤー)】が艦隊の前に出て盾になる。
 【フォウル・スレイヤー】からのデスザウラー荷電粒子砲と陽電子破城砲の同時発射と言うオーバーキルとも言える攻撃を
受けても全く動じない【黒いフォウルもどき(アイギス・スレイヤー)】。その艦の損傷ゼロである。




 【ファージ・スレイヤー】艦内
「エスラ様ぁ〜。今のN.G.の攻撃で【ハンス・ロディ】が大破しちゃいましたぁ〜 (どて)あだ!
 エスラの元へ走ってきたシロがこけた。まあ普段と同じな気もするが・・・・・・
「中破は無いが小破した艦があるな。【エーリッヒ・シュタインブリンク】と【若月】、【春月】だ。」
 表情を変えずにゲイムが続けた。表情が変わっていないのに呆れている様に見えるのは何故だろう。
「数が多いと名前を覚えるのもメンドクサイわね・・・・・・。」
 半眼で頭をかきつつぼやくエスラ。見るからに面倒臭そうにしていて見るほうのやる気がうせる。
「あ〜。とりあえず反撃しちゃって。」
 しかも投槍だ。
「わかりましたぁ〜」
 答えるシロの口調も軽く頼り無い。が艦隊の攻撃力は本物である。
 【パウル・ヤコビ】姉妹の45口径5inch単装砲が、21inch魚雷4連装発射管が、
 【秋月】姉妹の長10p砲が、61p魚雷4連装発射管が、
 【ファージ・スレイヤー】と【アイギス・スレイヤー】兄妹の陽電子破城砲が、レールガンが・・・・・・
【フォウル・スレイヤー】と【八島】に対し一斉に牙を剥く。




 【フォウル・スレイヤー】艦内
「これは・・・避けきれませんよエレ様。」
「仕方ない。デコイ投下!!」
 クロとエレの声が交差し、エレの手が一つのスイッチに伸びる。
「デコイって俺の事か〜〜!!」
 エレがスイッチを押し込むと同時にヴィーの足元の床が無くなり、彼は外へと落とされた。

同刻、【八島】艦橋
「魚雷はファランクスで落とせます。他は爆風でエネルギーの減衰を狙います。」
 普段と同じく艦長席の横に立っているなぎさもエレと同じく回避不可能という結論に達した。
「諒解、主砲弾種はそのままで良いな。照準変更の時間は無いな・・・。
発射準備の出来てるSSMは取り合えず撃ってすぐに自爆させるか・・・・・・。主砲及びSSM、発射!!」

・・・・・・数秒後
「SSMの自爆が出来ん!ある一点に向かっている。敵さんの攻撃もだ!」
「主砲やファランクスの照準まで何時の間にかその一点に合わさってますよ。如何なっているのですか!?」
かるいパニックに陥っているなぎさとネコ。

「やっぱりヴィーをデコイにすると効果が違うね。」
 そう言いつつ微笑むエレ。
「味方の攻撃まで引き寄せてしまうのが欠点ですけどね。」
 悪びれた様子の無いクロ。彼女達にとっては日常の事なのだろう。
「ゲホッゴホッ・・・。お前ら、人を殺す気か!!」
 敵味方からの一斉攻撃を受けたはずのヴィーが何時の間にか【フォウル・スレイヤー】艦内に戻ってきていた

「・・・エレさんが撃ち出したデコイでしたか・・・・・・。」
「ちょっと迷惑だったかな。」
 【八島】艦橋でなぎさとネコが呟いた。互いにしか聞こえ無いほどの小さな声で。
「対空攻撃を再開するか。そろそろ鬱陶しいしな。」
 今の所、【八島】は航空機からのミサイル、爆撃等の迎撃を4基のファランクスだけに任せている。
「主砲の弾種変更まで何発かかりますか?」
 不意に尋ねるなぎさ。
質問の意図がつかめず暫し押し黙っていたネコだが、それを無意味と判断して答える。
「4斉射って所だな。それまでは砲塔にある弾が消費しきれないからな。所で如何してそんな事を聞くんだ?」
 答えるだけ答えたネコからの質問になぎさが答える。
「対空はSAMとファランクスのみで。主砲は敵護衛艦陣を狙いますから対艦徹甲弾への弾種変更を」
「そう言うことか。・・・測定儀廻せ〜!!主砲照準変更!SSMで弾種変更までの時間を稼ぐ。」
 SSM、SAM、ファランクス、43.2cm砲。ありとあらゆる【八島】艦載兵装が一斉に火を吹く。周囲が轟音に包まれる。

「なぎささんも派手にやってるね。」
 【フォウル・スレイヤー】のメインモニタ越しに【八島】を見つつエレが言った。
レールガン、荷電粒子砲、デスザウラー荷電粒子砲、陽電子破城砲、パランスレーザー・・・・・・
 こちらも全兵装を撃ち出す【フォウル・スレイヤー】
閃光によって半径100mの視界が消える。現実ではありえないエネルギーを消費する。
 異常なまでの数のUNKNOWNにはこれでも充分とは言い切れない。
「本当に今日は数が異常ですよ」





 【ファージ・スレイヤー】が護衛の輪から抜け、単艦でN.G.に攻撃を始める。
特に【フォウル・スレイヤー】を狙って・・・・・・
「・・・【アイギス・スレイヤー】や護衛の駆逐艦に目立たせたくないだけだろうがな。それにライバルも居るしな」
 ゲイムが独白する。声は小さく、シロやエスラには聞こえない。





 【ファージ・スレイヤー】からの攻撃を受け、対空から対艦に切り替えた【フォウル・スレイヤー】
ほとんど互角の同航戦を繰り広げる。
「この【青いフォウルもどき(ファージ・スレイヤー)】、如何してこっちだけ狙うの!?」
 エレのある種悲痛の叫びが艦内に木霊する

『下!下!』
 突然、【フォウル・スレイヤー】と【八島】の通信機が誰かの声を出力する。
「何事?」
 と言いつつも外部カメラを下に向けるエレ。
書き手からも忘れられていたUNKNOWN戦車部隊が何時の間にか1000m以内に接近していた。
 普通に考えて艦艇の装甲を戦車の主砲で貫く事とは不可能であるが数が多いだけに何らかの被害が出る事は必須である。
「「緊急回避!!」」
 エレとなぎさの声が重なり【フォウル・スレイヤー】と【八島】がそれぞれ別の方向に舵を切る。
【ファージ・スレイヤー】が回頭によって速度が落ちた【フォウル・スレイヤー】を襲う。
 間の悪い事にUNKNOWN戦車からの一斉砲撃も加わる。
「電磁バリア、出力最大!!」
 エレの声と共に【フォウル・スレイヤー】の周囲が一瞬ゆがんで見える。バリアによる光の屈折か・・・・・・。
そのバリヤにより戦車砲弾は何とか防げた物の【ファージ・スレイヤー】の砲撃を防ぎきれない。
「うわっ・・・」
 攻撃を受けた【フォウル・スレイヤー】が思いっきり揺れる。
「エレ様、今の攻撃で電磁バリアの出力が落ちました。戦車砲撃でもダメージが来ます!」
 クロの悲痛の叫び。
全員が戦車砲砲撃による衝撃を予想した。

 しかしその予想は幸いな事に外れた。激しい轟音を伴って。
「地面がえぐれてますね・・・。クレーター?」
 誰かが呟くと同時に、ビルの横の空間が歪み、巨大な箱型の装軌車両が現れる。
「識別を確認するまでも無いね。リュージュ、来てくれたの!?」
 エレが【P4砂漠空母】に通信を送る。
『僕も混ぜて〜』
 その返答に一瞬、【八島】や【フォウル・スレイヤー】の高度が落ちたのは気のせいではないだろう。
『んな馬鹿な事を言うな。・・・全艦載機、艦載車両を発進させるぞ』
 まともに対応している此方はチャージュ。その言葉通り、飛行甲板からF/A−18やハリヤーが飛び立ち、車両格納庫から
多数の戦車が出てくる。
「先程の攻撃は【P4砂漠空母】からのグランドスラムでしたか」
 クロの声に安堵の色が混じる。リュージュの乗る【P4砂漠空母】は重装甲、重武装で知られているからだ。
 事実、グランドスラムで敵戦車部隊は壊滅。爆撃機や戦闘機もF/A−18やハリヤー、それに何より【P4砂漠空母】からの
ミサイル攻撃で押されている。