旭日旗は電子世界に揚がる   (ネーミングセンスがないのは自覚してます


【たぶん序章】


「・・・ちょっと何時もの電子世界とは違いますね」
 とエレが呟く。
「まあ、海軍省のLANは互換性があるものの独自の技術を使っていますから」
 答えたのはなぎさ。
「ともあれ、今日はお願いします。電子装備研究室でも対処できなかったもので・・・」
 彼女達は海上に建つビルの正面入り口前に居た。
多少離れた海面にやたらと頑丈そうな防波堤が張巡らされている。……そしてそれらの半分は黒い影に覆われている。
「見事なまでにUNKNOWNに侵されてますね。
・・・・・・それにしてもあのような立派なファイアーウォールが有りながら何故この様な事に?」
 とエレが防波堤を横目で見つつ尋ねた。
「先日の対テロ演習の際に、テロ役の陸軍特殊部隊のコンピューター技師が内部からウィルスを入れたようで・・・。」
 なぎさが苦渋の表情で答える。それに続くのは皆の足元を歩くネコ。
「それが原因でファイアーウォールに穴が開き、そこからUNKNOWNが入り込んだようだな。
絶対防衛圏の異名を持つ海軍省のファイアーウォールも中からは弱かった……と。」
 彼女達は行動を開始した。

  十六夜と琥鉄の二刀流でクロが防波堤壁面に付いた蔦の様な植物型UNKNOWを消滅させる。自衛手段は無く取り付いたデータを壊すだけの物の様だ。
 横で火炎放射器を装備したM−9(ヴィー搭乗)が残りを焼き払っている。
 ファイアーウォールを修復してこれ以上の侵入を防ぐ心算の様である。
時折出てくる触手型攻撃タイプのUNKNOWNから彼女達を守っているのはエレとなぎさ。
「……それにしても、何故UNKNOWN用の武器をなぎささんが用意できるの?」
 細雪を振りつつエレ。G3A3二丁を構えたなぎさが答える。
「前回のUNKNOWN戦で使用したスティンガーの構造を解析してましたから。それを応用してホログラムオプション武装モードを改造してみました。」
 セミオートとフルオートしかないはずのG3A3を三点射させるなぎさを多少呆れた目でエレが見ている。
 ふと思い出したように修復に当たっていたネコが呟く。
「この作業、何時終わるんだ?」
 M−9の外部スピーカーが唸り、答える。
「それは言っちゃいかんと思うぞ」





 時間は過ぎ去り・・・・・・。ファイアーウォールが復旧し、彼女達は一応は袋のネズミとなったUNKNOWNの掃討戦に出た。
「中も結構やられているわね」
 見渡す限り蔦に覆われたビル内部にそれぞれの得物を持った人影が3つ、巨大な機械が一つ。動物一匹。
一見して普通のビルだと言うのにAMMSSが余裕で歩ける大きな通路なのは電子世界故であろう。
 先程喋ったのはエレである。続いてなぎさの口も言葉を紡ぐ。
「バックアップが無かったら国防上の危機ですね・・・。早い所片付けましょうか」
「むしろバックアップがあるなら米軍方式でどうだ?外から大火力火炎放射器で一掃って奴だ」
 黒猫からさり気なく物騒な方法が提案されている。
「いや、此処は各個撃破だ。確実に消していかないと何処から再発生するかわからんからな。
ヌフフフフ、今日こそ俺の活躍する時だ!!」
 ヴィーの本音までM−9の外部スピーカーは伝えた。
「せめて本音は心から出さないで下さい・・・。ホログラムオプション武装モード、パンツァーファスト3」
 言い終わるか終わらないかのところでなぎさの肩に重量が加わる。
照準を付け、すぐさま発射。バックブラストとカウンターマスが周囲を襲う。目標はM−9
 この距離で外す訳も無く、脚部に着弾。M−9がバランスを崩し倒れる。
「室内でこの手の武器を使うと現実世界だったら射手も死んでるよな・・・。」
 慣れているのか平然としているネコ
「けほ・・・今のは何なのですか?なぎさ様」
 咳き込みながら尋ねるクロ。しかし答えたのはなぎさではなかった。
「ツッコミだろ。ハリセンを使うところで相手がデカイから対戦車兵器を使ったんだろうよ・・・」
「何時もこんな感じなの」
 エレが重ねて問いかける。
「対戦車兵器を一発程度ならまだマシだろ・・・・・・」
 やっと硝煙が薄れ、そこには中破したM−9が転がっていた。
・・・・・・ともかく、不安も残るが、海軍省LAN内UNKNOWN削除はこうして始まった。





 電脳界の空に浮かぶ一隻の青い戦艦。
その艦内にて・・・・・・
「なんだって私が植物型の奴らの増援に行かなきゃならんの。メンドクサイ」
「俺らしか動けるのが居なかったからな。早く仕事を終わらせればゆっくり休めるぞ。」
「エスラ様〜。新型武器を試していいですかぁ〜。」





「やっぱり火炎放射器が利きますね。」
「その分修復が厄介なんだっつーの」
 UNKNOWNを殆ど掃討し終え、外部からの復旧作業も始まった為にデータが飛び交うビルの中での
なぎネココンビの何時もの会話。
「結局全然目立てなかった・・・」
「まったく、皆を出し抜いて目立とうなんて考えは甘いですよ。」
「ハハハハ・・・」
 順にヴィー、クロ、エレの此方も普段と同じような会話である。
結構余裕があるようだ。
 彼女達はある一画に歩を進める。UNKNOWNが占拠する最後の一画へと・・・・・・

『不正侵入発生!ファイアーウォールが突破された!此処は電装研が押さえるから向こうに当たってくれ!』
 それは未だUNKNOWNが占める部屋の扉を空けた直後の事だった。開発技術部長からの通信。
「UNKNOWNの増援!?」
 叫んだのはエレ。横に居たヴィーがサーチを始める。なぎさの「ツッコミ」でM−9が使用不可になって以来、
付いてくるだけで何もしていない為か妙に張り切っている気もする。
「来た!航空機型多数。爆撃機と戦闘機の編成だ。_下に戦車型も居るな」
 サーチ結果がヴィーの口から告げられ、それを聞いた全員が外へと走り出す。
「エレ様、こちらも増援要請を出しました。【フォウル・スレイヤー】も来ますのでそれまで時間稼ぎを!」
 正面入り口を蹴破るように外へ飛び出す。
「搭乗型武器プログラム【アーバレスト】!」
「M−9が使えないからな・・・。ガンキャノンのほうが良いんだが・・・・・・【ガンタンク】!」
 エレとヴェーの声に応え、二機の大型機動兵器が出現する。
「私はこのままで・・・・・・」
 クロは十六夜と琥鉄の収まった鞘を軽く叩き、戦車に向かっていく
完全に置いて行かれたなぎさとネコ。
「俺らは如何するんだ?」
 ネコの質問に対ししばしの逡巡の後なぎさが答える。
「ちょっと待ってください。今は外のバックアップファイルしか使えないんですから・・・」



 マスタースレイブとモビルスーツが次々と爆撃機、戦闘機を潰し、二振りの日本刀が戦車を輪切りにしていく。
「もしかして俺、目立って あが!!
 外部スピーカから戯言を流すガンタンクにアーバレストのショットキャノンが撃ち込まれた。
「馬鹿な事を言ってないで集中しろ!」
 人型兵器でのドツキ漫才は止めて欲しい・・・・・・
 その後方に居るなぎさとネコ
「さて、此方も行きますか。」
 三脚の付いた筒としか形容できない物の後ろに立つなぎさが言った。
「で、結局使うのは重MATか?」
 普段通り足元に居るネコが一応、と言った感じで尋ね、照準器らしき物を操作するなぎさが答える。
「まあ、対戦車用としては高威力ですし。・・・・・・照準完了、発射・・・・・・・・・着弾!」
 バックブラストを撒き散らし、目標に向かう重MAT弾。UNKNOWN戦車の正面装甲をぶち抜き撃破する。
 エレの乗ったアーバレストのショットキャノンが低空の戦闘機を撃破し、ヴィーのガンタンクのキャノンが高空の爆撃機を落とす。
UNKNOWN戦車の主砲から撃ち出された対戦車榴弾を切り落とす十六夜。それを操るクロ。
 外に出てからの合計UNKNOWN撃破数は3桁を超える。