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「目次
  【序章 八洲】  【序章ディブリコア】 【一章】 【二章】

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「本編
【序章 八洲】
 大小10隻の艦隊は低気圧に翻弄され、激しい波に揉まれながらも懸命に前へと進んだ。
甲板は常に洗われ、ブリッジの風防は水滴で前も見えない状況だが、彼女達は暴風雨から逃れるため、必死にスクリューをかき回す。
 嵐の先で彼女達を待っている運命も知らずに……

【序章 ディブリコア】
 全長4クルト(1クルト2m)程度の漁船に乗った漁師が、それに最初に気が付いた。
 作業用のランプが要らなくなる夜明け時。海上の見通しがよくなり始める頃合にふと沖を見上げると、
昨日まで存在しなかった幾つもの島があるのだ。
「なんだぁ、あの島は?」
 自分の見間違いと思い、後ろに居る仲間へ振り返ると、仲間は青ざめた顔で自分の背後を指差している。
数瞬後、彼らは慌てて帆を張ると出せる限りの速度でその場から離れていった。
空には『妙な島々』から出てきた『龍』が飛び回っている。

【一章】
 漁師が『妙な島々』、そして『龍』を発見してから3日、ディブリコア王宮は蜂の巣を突いた様な騒ぎが続いていた。
 この国生活を支える漁業が『龍』のお陰で全く出来ず、元々海産物が豊富であるがゆえ
備蓄食料が少ないために食糧難が起き始めようとしていたのである。
「即刻あの島に攻め入り、龍を悉く打ち倒すべきである!!」
「龍に敵うはずが無い! 隣国に救援を求めつつ共生の道を探るべきだ!!」
 主にこの二つの主張がぶつかり合い、まったく平行線のまま時間が浪費された。
踊るばかりでまったく進まぬ会議に業を煮やした国王が、以下のような勅命を出すことでようやく家臣達が落ち着いたのである。
 曰く……
――
島への威力偵察を行うと同時に隣国へ救援を要請せよ――
……
まあ、要は折衷案である。
 ともかくとして、龍巣食う島に向かうために攻城兵器を突貫工事で船に取り付け、騎士団は『妙な島々』へと向かうことになる。
「で、これを如何使えと言うのかね?」
 その船上でかなり不満げな声を上げたのは偵察隊の隊長を命ぜられたボルツァーノである。
彼が不満げに見上げた先には投石器が二本マストの帆櫂併用船の船首付近に鎮座していた。
「空をかなり速く飛びまわる龍に、こんなもの当たるわけ無いじゃないか!!」
 彼の激昂を受けている船頭は、視線を彼方此方に泳がせ、落ち着かない様子で言い訳を始めた。
「こ、こちらは『奇妙な島々』への上陸支援用でげして、対龍用の武器としましては、捕鯨船のモリを改良したものを使用しますです、ハイ」
 言っている本人も龍に聞くとは思っていないらしい。
「はぁ……
仕方ない、無茶な命令を出されるのは今に始まった事じゃ無いしなあ」
 ボルツァーノは諦めたように米神に親指を当ててぐりぐりと捻ると、通信や索敵、さらには攻撃の補佐も勤める魔術師隊が待機する船室へと足を向けた。
 今回の威力偵察は船乗りと剣士と魔術師の三位一体が求められるのだから、顔を覗かせて悪い事は無いはずである。
 そんな事をボルツァーノが考えつつ船室の扉を開けると、丁度魔術師隊は威力偵察に関する机上演習を終えたところだったらしく、
資料や海図、コマなどを片付けていた。
 そんな雑然とした中、ボルツァーノは魔術師隊の隊長を見つけると頭を下げた。
「今回は宜しく頼む。」
「いえ、此方こそお世話になります。」
 黒いローブに身を包んだ魔術師隊の隊長と一言二言言葉を交わしたボルツァーノは、自分の部下たちが待つ船室へと戻っていった。
 3隻の投石器装備大型船と6隻の銛装備中型船は波に揺られつつ、『妙な島々』へと近づいてゆく。

【二章】
 その時、艦隊司令長官である古山大治郎は迷っていた。
 3日かけて行った、艦隊のレーダーとソナーに航空機を最大限活用した周辺調査は、
現在位置を今居る場所が何処とも知れぬ国の沿岸20海里と教えた。しかし分かっているのはたったそれだけである。
経度も緯度も分からず天体観測も役に立たない。さらに無線通信は何処にも繋がらず、
已む無くその場で停泊し燃料の節約を艦隊に命じている。
 彼らの艦隊に近づく船はどれも帆櫂併用の木造小型船で、しかも肉眼で見える距離に来るとすぐさま反転してしまい、
人づての情報収集も出来ないという有様であった。
 いっそ領海領空侵犯してでも調査してしまおうかと思わないでも無いが、国際問題を起こす気はさらさらない。
 何もわからぬまま、何も出来ぬまま過ぎる時間を如何にももどかしく思っていた矢先、状況は一変した。
「敵味方不明艦隊接近。約9海里」
 CICから送られた報告により、古山の艦隊は慌しくなった。
何と言っても距離が近すぎる。艦橋ウィングから見た水平線の距離である。
 あらゆる艦の、全てのシステムが立ち上がり、艦隊という名の海獣が眠りから目覚める。
 古山がCICに入るなり、情報をまとめた参謀が報告にやってくる。
「レーダー反応が微弱ですが10隻程度と思われます。ステルス艦でしょうか?」
「下手すると、木造艦船かもしれんな。
嵐を抜けてから今まで、近づいてきた船は全て木造だ。」
 昨日完成したばかりの、この周辺の海図を広げ、自艦隊とアンノウンの位置関係を確認し、対策を考える古山や参謀たち。
「ともかく、こっちから動くことは有り得ない選択肢だからな。
もう少しワッチを強化して……
SH-60YKの発進準備は開始しております。」
 各艦の艦長の仕事は早かった。旗艦である軽巡庄内の艦長がヘリを出す準備をしていると報告したと思えば、
軽空母翠鷹からは艦載機をカタパルトに乗せたと、二隻のヘリ空母、清鳶と翔燕は艦載した全機の整備は完了していると報告が来た。
「ここは、庄内から出そうか。軽空母の艦載機は万が一に備えてそのまま待機で」
 ぽつぽつと指示を出し、軽やかに飛び去るヘリをモニタ越しに見送る。
『こちらシーホーク庄内2号機、目標の上空に到着。ビデオライブを始めます。』
 ヘリからの音声通信とともに、CICに中継された映像が出る。
「これは…… やはり木造帆船のようだが、大きいな」
「9隻とも、練習船『八洲丸』以上の規模ですね。中央の3隻は特に大型です。」
「いい腕をしていますね。外周の6隻は綺麗に正六角形です。」
 見たままをつぶやく古山と参謀、そして艦長。
 ヘリが撮影した画像には中型帆船6隻が正六角形を作る中心に正三角形の陣形を作った大型帆船が映っている。
「船首側に何か装備しているようだな。ズームできるか?」
『了解、降下します。』
 彼らを衝撃が襲ったのはこの数秒後である。

【三章】
 威力偵察船団の見張りが『妙な島々』を水平線に確認したころ、船頭とボルツァーノ、そして魔術師隊の隊長は報告される『妙な島々』の形状、
位置関係を元に上陸点の選定を行っていた。
「一番大きな島を中心として、大雑把に二重円の形で十個の島があるのか。」
 報告を頼りに海図に島の位置を大雑把に描き留めるボルツァーノ。
「どの島も草木の一本もなく、周囲は断崖絶壁との事。投石器で崖を崩す必要がありますな。」
 上陸方法を気にする投石器を担当する魔術師隊の隊長。
「一番外側の島に上陸するだけで良いでげしょう?」
 龍が怖いのか弱気な船頭。
三者三様の言葉を交わし、とりあえず今回は橋頭堡を確保するということで、船頭の意見が通った。
 会議を終え、甲板に出てきたボルツァーノの耳に轟音が襲った。見れば船員たちもパニックを起こしかけている。
「なんだ! 何が起こった!?」
「りゅ、龍が! 我々に襲い掛かろうと!」
 見上げれば、そこには白い龍が、爆音轟かせ、空気を叩き下ろすように羽ばたいていた。
まるで、獲物を狙うように上空でぐるぐると首を巡らせている。
「降りてくるぞ!」
 見張りが悲鳴染みた報告を張り上げ、龍の羽ばたきがそれを半分掻き消した。
 それは、頭にギラリと光る巨大な目を持ち、尾は真っ直ぐ伸び、羽は目にも留まらぬ速さで羽ばたいていた。
「う、撃てええ!!」
 うろたえた船頭が